数年前、中国に行ったとき昆明に有る中国トレーニングセンターの話を聞いた。
標高2000m地帯の昆明にあるこのトレーニングセンターには、中国全土から選り優られたアスリート「まだ子供」たちが送られてくる。その施設にはありとあらゆるトレーニング機材が用意され、また、このトレーニングセンターの周りは高い塀で覆われ、その塀にはなんとガラスの破片が埋め込まれていてその施設からは簡単には逃げ出すことができないそうだ。その話を聞いたとき、自分の頭の中では国家の威信をかけた人さらい系、超バイオレンス、スポーツ集団、現代の虎の穴「byタイガーマスク」を連想した。
しかし、よくよく聞いてみるとその塀は、外のまずしい生活との境で、外部からの侵入者を防ぎ、中の人間「選手」を守る為の物であり、また、中には食べるに困らない生活と、共産主義国家で有りながら、スポーツで成功すれば豊かな生活を送れるといった希望もある。そこは彼らにとって桃源郷のような世界なのかもしれない。それを思うと自分も97年、イタリアのアマチュアチームで走っていたときのことを思い出す。
自分がつれてこられた(?)チームの寮は、ミヤタの社宅より狭いスペースに、二段ベットが5つ、10人の共同生活だった。また便座もシャワーも1つずつしかなく、とても10人の男たちが生活できるスペースではない。かなりストレスのかかる環境ではあったが、毎週土日はレース、夏頃には火曜日の夕方のレースも加わり週3回ほどのレースをこなした。毎日自転車ずくめの生活のお陰で、最初は極悪と感じていたそのチームからも、翌年数人のプロ選手が生まれ、また数年後には世界チャンピオンになる選手もいた。
97年僕が体験したその環境は上に道がつながっていたのである。ほかの選手たちがどのように感じていたかは分からない。しかし、今思えば自分にとってその環境は中国の選手たちが思っていた桃源郷だったのかもしれない。今更ながら当時の事を思い出してもどうにもならないが、今できる事は、34歳の自分がまだ走れる環境が有ることを幸せに感じ、周りの人も自分が走ることで喜びを感じさせてあげるように努力すべき事であろうか。
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| プロフィール |
| 真鍋
和幸 選手
ベテランライダー
アトランタオリンピック日本代表。主要レースで多くの優勝経験を持ち、数々の国際レースで活躍してきた。'03年も中国・台湾での国際レースに日本代表として参戦、ステージ優勝を飾る。ストイックなまでに努力を重ねるその姿勢は、若返りの進んだチームで、ひとつのモデルとなっている。
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