ミヤタスバルに移籍しての2シーズン目も、既に折り返しを迎えようとしている。
過ぎてしまった時間の流れは残酷なまでに早い。その練習、そのレース、そのアタックに、一心不乱に取り組んできたのに、終わってしまえば一瞬の記憶の断片に過ぎない。
そういう儚さの上に成り立っているからこそ、スポーツは美しく、勝者は惜しみなく讃えられるのだと思う。
ロードレースにおいて、勝者は偉大だ。
しかし「勝てる」選手と「強い」選手は、若干ニュアンスが異なる。
俺は「強い」選手になりたい。
その気持ちと欲求は、10代の頃から変わっていない気がする。
今よりも速く、力強く、タフになる事。
それぞれを数値に置き換えれば一目瞭然だけど、それには及ばず、強くなったか否かは自分の感覚が判断してくれる。
走りなれた峠道で、今までにない景色の流れ、風を切り裂く音を感じられたなら、それは「強くなった」事と同義だ。
それからもう一つ、「強い」事の条件は、レースで力を発揮できること。
レース本番で、自分のパフォーマンスを100%、時に110%出す。
本来ならその力をどういう風に発揮するかがレースの結果を左右する所だが、俺にとってそれは最も興味がある事ではない。レースは生き物で、時に自分が逃げる立場になったり、追う立場になったりする。どちらもあり得るから、置かれた状況で力を発揮するしかない。
ベテランと呼ばれる事に違和感を感じなくなった今、俺は随分ズル賢くなった。自分が狙ったところ意外では、なるべく力を使いたくない。
若い頃は「強さ」をアピールできる場所はいたる所にあると思っていたので、上手く立ち回る選手達を、「卑怯」と思った。
しかし今では俺自身が「上手く」なっている。まあ、これだけキャリアを積んで「上手さ」がないのも問題あるが、自分自身では決して歓迎する事ではないと思っている。
人は誰しも時の流れと経験に磨かれて変わっていく。
でも決して変わらないモノもある。
変えたくないからなのか、性格上変わらないのか、多分その両方だろう。
ロードレーサー・カキヌマアキラが目指すのは、「強さ」だ。
この信念を胸に、シーズン後半を戦う。