プロフィール
中込由香里
02年アジア大会MTBXC銀メダリスト。
02年ジャパンシリーズXCチャンピオン。
元ロードレース全日本チャンピオンでもある彼女は、
夫・辰吾氏とともにペンション「SY-Nak cabin」を野辺山で営み、
そのスキルの高さを活かして自転車愛好者を育てる活動にも
力を入れている。

「SY-Nak cabin」HP 
www.sy-nak.com
Wheel Talk 目次
8月20日号「仕事のことをお話します」
9月13日号「ベンチャービジネスとしてのメッセンジャー」
10月21日号「救急メッセンジャーのその先のそのまた先へ!」
11月27日号「ここから、ここを含む世界へ」
12月24日号レーサーでなく「チャリダ−」
1月24日号 「自転車に乗ることと、食べること」
2月21日号 「最高の走りにつなげるために」
3月27日号 「“スポーツは文化”を地域から」
4月25日号 「メッセンジャーと風景」
5月21日号 「私がスポーツ自転車普及にハマったワケ」 
6月27日号 Panaracerは、「茄子 アンダルシアの夏」を応援します!
8月28日号 「何故か魅力的に感じてしまって・・・」
9月25日号 「初めての世界選」
10月27日号 「走った後は、地酒だぜ!」
11月25日号 「すべてから学ぶ」
12月25日号 「いつもスペシャル★」
1月21日号「MTB XC競技のトップ選手であり続けること」
2月27日号 「忘れられない一日」
3月26日号 「無名な普通のバイカーより」
4月22日号 「世界で日本人選手が活躍する為に…」
5月27日号 「被写体としての自動車と自転車」
 好きなだけ自転車に乗れて、おいしい物が食べられる、それがとっても幸せ。食べることについて、私は興味深々。それはただ単に食いしん坊だから、というのもあるけれど、スポーツ選手として強くなる、そして持てる力を存分に発揮するには非常に重要なことだと考えているからだ。

 食べることについて、まずはただの食いしん坊な自分の捕らえ方はどう?
私が食べ物に対する欲求が強くなったのは、小学校高学年から中学生時代にさかのぼると考えられる。
この頃、私は器械体操をやっていた。
モントリオールオリンピックをテレビで見て、コマネチに憧れ、オリンピックを目指し、本格的に取り組んでいた。本来なら一番育ち盛りのこの時期に、厳しい練習と食事の節制で体の成長はストップした。中学3年の時、度重なる大きな怪我で選手の道を断念した時、私は147cm、34kgしかなかった。

 食事制限。
自転車選手にとっても、脂肪はお荷物となるのでダイエットの必要があるけれど、体操選手にとってはそれが非常にシビアな物。毎日体重計に乗らされて、コーチが厳しくチェック。たった500g増えただけで、高度な技は出来なくなるし、大きな怪我にも結びついてしまう。大袈裟ではなく、命を守る為にダイエットが必要だった。その反動かな。食いしん坊は。
 自転車選手である今もダイエットは必要。力を発揮できるBest体重があり、シーズン中はそれに近い体重を保つ必要があるし、重要な大会にはBestに持っていった方が良いに決っている。でも、シーズンオフがある私達には1年中Bestを保つ必要が無い。選手として、一線を超えない羽目外しが許される。私のケーキバイキングなどでの食いっぷりは知る人ぞ知る・・・おいしい物を食べている時の幸せな事よ。特に甘い物には幸せが宿る・・・

 さてさて。それでも幸せな食べ物ばかりに浸っている訳にはいきません。なぜなら、食べている時は幸せでも、好きな物をたらふく食べ続けていれば、体はどんどん醜く重くなり、自転車に楽しく乗れない不幸せな状態に陥ってしまうから。人間は本来、体が求めている物が必要なものであり、食べたいと思う物を食べるのが良いとされていたけれど、ほとんどの人はそのシステムは壊れているでしょう。だから少し、切り替えなくてはいけません。幸せな食べ物から、体が必要としている食べ物へ。
私はトレーニングと食事と休息は、1セットとして捕らえています。この3つがそろって初めて身になる。せっかく良いトレーニングをしても、身にならないなんてもったいない。身になる為には必要な栄養を与えてあげなければならないし、無意味なカロリーを摂っている余裕はない。食事はある意味、必要な物を体内に入れる単純な作業であれば良い。

 食べたい物を我慢する、という意識も少しは必要かもしれないけれど、ダイエット=我慢という事でもない。幸せ系の食べ物を食べる幸せとは別の、体を作っていく幸せがそこにはある。もちろん、必要な物を食べる事自体幸せなのだが。前述のシステムは、私もオフの間には完全に壊れてしまうけれど、シーズン中は少し壊れるぐらいに回復する。特に我慢する事なく、必要な食事が出来るし、ストレスになるようなダイエットはしないようにしている。

 幸せ系の食べ物を食べる喜びと、それを食べずに体を研ぎ澄ましていく喜びと、必要な物を食べる喜びと。そして、必要な物をいかにおいしく調理するか、そこが女将の腕の見せ所でもあるが、おいしいと食べ過ぎてしまう、そこがジレンマ。必要なだけ、というのが難しい。

自転車に乗る事と食べる事。
この2つは私にとって、ずっと幸せに思える事であり続けたい。