| いよいよ2004年シーズンを迎える。
監督としては3年目の仕事だ。
「石の上にも三年」。
元木GMから監督就任時に言われた言葉だが、
その節目の年となる今年はアテネオリンピック開催年でもある。
オリンピックは国内実業団チームにとって重要なイベント。
スポンサーである各企業にとって「オリンピック日本代表輩出」の言葉は、
どんなに分厚い企画書よりも説得力があるからだ。
そして、その重要なオリンピックイヤーとなる今年も、
ミヤタスバルはパナレーサーと共にレースを戦う。
昨年、ミヤタスバルはパナレーサーと新規のスポンサー契約を結んだ。
パナレーサーとパートナーを組んでからは、
商品の宣伝と共に製品開発の仕事も担うことになる。
「パナレーサーのタイヤを熟成させるのは僕たちの仕事」。
頻繁にプロトタイプのサンプルがチームに送られてきては、
テスト後、レポートを提出し続ける選手たちにそんな自覚が芽生えはじめた。
そんなやりとりの中で感じたのは、タイヤという商品の価値基準の難しさだった。
「このタイヤはとても良い」「グリップが良い」「乗り心地が良い」。
例え目の前に最高のものがあっても、
それを伝える手段が主観的な言葉以外に殆どないからだ。
明確に説明しにくいということは、逆に事実を偽ることもし易くなる。
例えば、有名プロ選手がツールドフランスのアルプスステージで、誰よりも速く峠を下っているシーンを見れば、そのタイヤにケチをつける人間はまずいなくなるだろう。
本当はそのタイヤがあまり良くなくて、単にライダーのテクニックが素晴らしかったとしても見ているほうには分からない。
当然、逆の状況も考えられる。
そんな先入観が、タイヤ開発や宣伝のなかでネックになることを知った。
そういった意味では、どこか自転車作りに共通するところがあるかもしれない。
タイヤ作りにおいて、エンジニアは必死になってデータを集め、
数多くのプロトタイプを準備して実戦で試していく。
そしてその繰り返しの結果、最終的な絶対性能を手にすることが可能となる。
フレーム作りにおいてもほぼ同様の作業をこなす。
しかし、商品の性能が100%世論に反映されるかというと決してそんなことはない。
現代の市場には、結果だけで生き残ることはできない難しさがある。
それは、人間の持つ心理的作用だ。
人は、常に実際よりも行き過ぎた評価を下す傾向がある。
自分が良いと思い込んだモノには必要以上に固執し、
ダメだと思うと良いものまでが悪く見えてくる。
集団心理が働きやすい「日本人文化」では、よりその傾向が強くなるようだ。
その心理的作用をコントロールするのは、他でもないコマーシャリズムだ。
僕たちは、1年間パナレーサーのタイヤを使用し、その良さや弱点を良く知っている。
そして、その結果として言えることは、多くの宣伝費を使う海外のメーカーよりも、優れている点をたくさん持った優秀なタイヤであるということだ。
今後はその「本当の良さ」をどれだけ多くのひとに知ってもらうかが、
僕らの仕事になっていくのだろう。
「良さを知らせる」
このキーワードは、コガミヤタという素晴らしいブランドを持つ宮田工業や、ミヤタスバルのチーム運営、そしてロードレースの発展を願う自転車界全体の課題でもある。
|