今もマグマがくすぶるキラウエア火山で有名なビッグアイランド・ハワイ島は、西側にリゾート地帯、東には熱帯雨林が生い茂る。ここハワイ島を舞台に毎年10月に開催されるトライアスロンの祭典がアイアンマンだ。メイン会場の町カイルア・コナはアイアンマン・シリーズ戦でクオリファイした選手たちが世界中から集まり1年で一番にぎやかなシーズンとなる。ハワイの大自然の中には昔からたくさんの神々が宿っていると信じられ、なかでも「火山の女神ペレ」はキラウエアに住んでいるとか。生きものすべてにパワーを与えている気がしてならない。私も島へ入ると不思議と体調が良くなる。これも、もしかするとペレの仕業かも・・・。神々が宿るとするならばこれまでに出会ってきた島の人々は、神のめぐりあわせとはいかなくとも何か縁あって出会ったに違いない。コナ・コーヒー屋のジョンは昔、騎手だった。今は手綱を引く代わりにコーヒー豆を挽き島一番のコーヒーを作っている。暇があると仕事着のままランニングに出かける。仕事着とはいってもTシャツに短パンときどき帽子。なんとも気さくで自然体。ハワイアンジュエリーショップのおかみさんは、いつもサービス満点で迎えてくれる。サンディエゴの友人達は休暇を兼ねて応援に。長年レースをともにする常連選手も名をつらね、ここへみんな帰ってくる。世界がここにあるようだ。
私がトライアスロンにはまってしまった理由、それはこのハワイにある。1992年の参戦以来、もう15年の付き合いだ。何が楽しいかって?毎年同じコースを走っていればそろそろ飽きるだろう?そう思われるだろう。ところが、すべてを熟知しているのにもかかわらず波や風、スコール、路面の状態、何もかもがいつも違っている。思い通りのレース展開は一度もないのだ。自然環境が厳しければ厳しいほどチャレンジ精神が湧いてきて、ガマン強く立ち向かいたくなってしまう。あの北風と太陽という物語を思い出す感じ。集中力って何時間も持続しないのに、泳いでいる1時間、バイクに乗っている5時間、ランニング3時間の間、いったい何を考えているだろう。とよく聞かれてしまう。簡単に言えば実は何も考えていないのであり、楽しんでいるといった感じなのである。景色の変わりを楽しみ、風を感じ楽しみ、声援を受けたまに返す楽しみ、湧き上がる気持ちそのまんまだ。そしてレース中は自分を見ているもう1人の自分が存在し、そいつとお互いに話しをし相談し、その一瞬ずつを積み重ねながらフィニッシュを目指している。約9時間の競技時間はあとにも先にもこの瞬間だけ。それを乗り越えれば思いもよらない結果があったりする。あきらめたらそこまで。自分の限界を知った上で首の皮1ミリだけ残し、少しずつ成長していっている。15年前は120%のトレーニングをして、レースでは100%を出そうと思っていた。でも本番は90%の力が出ればよい方だ。今それをやってしまうと1シーズンが続かないだろう。感覚では80%のトレーニングで、本番でも80%を出し切ることを理想にしている。うまくいったらその上にまたはいあがろう。まだまだこれからが挑戦、ペレの魔法が解けない限り走り続ける。今年のアイアンマン・ハワイ(ワールドチャンピオンシップ)は10月13日開催。私は日本で生まれたパナレーサーのタイヤで黒い溶岩大地を駆け抜けます。どうぞご期待ください。それではハワイで会いましょう。
アイアンマン・オフィシャルサイト:http://www.ironmanlive.com/

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プロフィール |
谷 新吾 選手
プロフェッショナルトライアスリート
1967年熊本県生まれ
プロフェッショナル・トライアスリートとしてアイアンマンなどのロングを主戦場に活動。
近年は北米のアイアンマンに挑戦し好成績をあげる。
今年3月アイアンマン・ニュージーランドで8位に入賞し、
世界最高峰「アイアンマン・ワールドチャンピオンシップ(ハワイ)」のクオリファイを獲得。
10月ハワイ島・コナにて15回目のハワイ世界戦に臨む。
主な戦績:
1991年 全日本トライアスロン皆生 優勝
1993年 アイアンマン・ハワイ 12位
1997年 全日本トライアスロン宮古島 優勝
1999年 アイアンマン・カナダ 2位
2001年 アイアンマン・カリフォルニア 5位
2002年 アイアンマン・レークプラシッド 3位
2005年 アイアンマン・コーダレーン 10位
2006年 アイアンマン・ジャパン 7位
2007年 アイアンマン・ニュージーランド 8位
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